スタインウェイ物語
2023年6月20日
「スタインウェイ物語」(R.K.リーバーマン著、鈴木依子訳、法政大学出版局)という本を読んでいます。ハードカバーで460ページ以上ある本なので、途中駆け足でやっと読み終わったところです。かのピアノのスタインウェイ・アンド・サンズの創業、というよりスタインウェイ(ドイツ名はシュタインヴェグ)一族がドイツから出てきて、現在、と言っても原作が刊行された1995年までですが、までの物語です。ピアノではなく、「人」です。この本の存在を知ったのが雑誌「ショパン」に連載されている「ピーター鈴木の横町ばなし」に紹介されていたからです。この本の最後の方、「スタインウェイとヤマハ」の章を読んだら、その続編が「ピーター鈴木の横町ばなし」になっていました。
この本を見て感じたこと、当時のアメリカ社会が、ドイツ系だから特にそうなのかもしれませんが、徹底した家長主義、男尊女卑。家庭内でも上下関係に厳しく、上のものは下のものに命令するだけ。家庭内がそうですから、アメリカの「家族的な会社」の意味が日本とはまるで違います。アメリカの「家族的な会社」は、下のものが素直に上の命令を聞いて反抗しないことを意味しているようです。それに、女性は人間扱いされていません。戦後アメリカが日本に男女平等を教えましたが、これはアメリカの制度を持ってきたのではなく、アメリカではまだ実現していない理想の姿を日本で実現させようとしたみたいですね。
労働者の扱いも、ひどいものですね。会社というものは株主のもので、労働者は単なる数字としか見ていません。雇う側と雇われる側、完全な階級社会です。実際には雇われる側の中でも、オフィサーとワーカーとの階級があるみたいですが。よく日本で誤解されていますが、アメリカは階級がないのではなく、その階級が固定されておらず、その気になれば壁を乗り越えられるところ。アメリカは自由の国と言いますが、壁がないのではなく、壁を乗り越えられるところが自由の国です。かつてのヨーロッパの貴族社会では、能力があっても生まれで壁は決まっていましたから。
会社の利益を上げるためには、労働者の給料を下げる。あるいは、今の人間を首にしてもっと給料の安い移民労働者に切り替える。まあ、こういう発想で工場を運営していたら熟練工は育たないし、競争力はなくなりますね。マイスターの国のドイツから来たスタインウェイ家がこういう工場運営をやっていたことが不思議ですが、マイスターは工場に一人だけいれば良いというので、職長だけを大事にしていたのかもしれません。
さてここからは本から離れますが、今のスタインウェイ、スタインウェイ家のスタインウェイではないスタインウェイのピアノは、昔に比べて品質は落ちたのでしょうか。「落ちた」と言って昔のスタインウェイをレストアして、「これが本来のスタインウェイだ」と言っている方もいますが、各ピアノコンクールやリサイタルで、現在のスタインウェイのピアノが選ばれ続けているのも事実です。数年後にどうなっているかわかりませんが。
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