過去の技術
2024年5月30日
熊本県内のバス事業者5社が共同で、全国共通ICカードから2025年3月をもって脱退する、という発表がありました。それに合わせて、熊本市電も2026年3月で脱退するするそうです。脱退すると、SUICAやICCOCAなどの交通系ICカードが使えなくなります。その後はタッチ式のクレジットカードや、バーコード払いになるとか。脱退理由は費用で、契約を更新する費用が出せないというものです。更新料が払えなくて賃貸マンションの家賃の安いアパートに引っ越すみたいなものですが、ICカードの読み取り器にはサーバーとの通信機能だけではなくカード内容の書き換え機能が付いていますから、機器の更新料も高いんでしょうね。
交通系のICカードは、残額などのデータをカード内に持っています。そこでタッチした短い時間内に、降りるときには、無線で給電→乗ったと駅の情報を読み出し→サーバーに通信して料金を計算→料金を引いて残額を書き込み→残高不足ならゲートを閉める、という動作を行っています。すごい技術だと思います。
一方バーコード決済だったら、乗るときは○○さんが△△駅で乗ったという情報がサーバーへ。降りるときは○○さんが××駅で降りたという情報をサーバーに送り、料金計算や残高不足(プリペイドの時)でゲートを閉める指示も全部サーバーからになります。今までは全部現場でやっていたことを、すべてリモートに切り替えるようなものですね。通信速度が速くなったからできることで、SUICAが登場した2001年頃では、やりたくてもできなかったでしょう。
乗車する側は、ICカードはその名の通りIC内蔵のカードですが、バーコードは個人のなんとかペイの口座番号かクレジットカード番号さえ明示すれば良いので、紙でも大丈夫です。その紙に「○○駅から△円区間」という情報のQRコードを印刷したものが、QRコード乗車券です。実際の自動改札では磁気に書き込まれた内容だけで券面など見ていませんから、何かで情報が書き込まれていれば良く、磁気と同等の情報を書き込めるQRコードができたおかげですね。
話がICカードからどんどん離れますが、磁気情報の乗車券を使った自動改札機は、すごい技術が使われています。切符はどんな向きに入れても、整列されます。一方磁粉を切符に塗る技術も、いろんなノウハウが詰まっています。欠点は磁気券は紙の切符より高いのと、自動改札機内を紙が移動していくため、紙の粉の掃除とか定期的なメンテナンスが必要で、故障しやすいことです。そのため鉄道会社ではこれも数年のうちに磁気券を廃止し、バーコードに切り替えたいという意欲を持っていますね。画期的だった磁気券での自動改札機や、ICカード(Felicaシステム)も過去の技術になる日がそんなに遠くないかもしれません。
過去の技術と言えば、小生などはその最たるもので、演算速度の遅いCPUを使った検査機を高速組立機の速度にいかに間に合わせるか、いろんな技術(技術と言うより、実際は裏技)を使いました。CPUの演算速度が上がったら、不要な技術です。
鉄道の運転関係でも、過去の技術がたくさん出ていますね。SLの鎌滝とまでは言いませんが、抵抗制御でしかも手動進段の直流旧型電気機関車(例えば、EF15など)で貨物列車を引いて坂を登るなど、もう今の運転士(昔は機関士と言いましたが)ではできないでしょう。昔の名人芸は、もう過去の技術です。
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