ピタゴラス音律
2024年3月31日
前回書いた森本恭正氏の本のなかに、ピタゴラス音律の音の取り方が書いてありました。ある音の周波数を倍にしたものが1オクターブ(8度)、1.5倍にしたものが5度で、これを基準の音を取って行くものです。これが音階の基本と言われています。なお8度だの5度だのという数字は後から付けられたのですが、現在ではその方が音をイメージしやすいので、その表記で行きます。
ある音、仮にそれをFとすると、その音の周波数の1.5倍がC、高くなりすぎると1オクターブ降ろしてそのまた1,5倍がG。という風に時々1オクターブ降ろしながら次々に1.5倍していくと、F→C→G→D→A→E→H→Fis→Cis→Gis→Dis→B→Fと一回りします。これで12音階すべてが出そろったわけですが、一回りしてFに戻ってきても元の周波数にならないんですね。起点は349.2Hzだったのですが、一周して戻って来ると354Hzになっています。1.3%ほど高いです。これは1.5の12乗が129.7であるのに対し、2の7乗は128であることの差です。
ピタゴラス音律を平均律と比較すると、全体的に高いですね。それから、平均律の半音の周波数比は1.05946(正確には10のlog2/12乗)の等比数列なのですが(だから平均律!)、ピタゴラス音律の半音比は等比ではありません。こうやってみると、平均律というのはよくできていますね。
ピタゴラス音律を純正律と比較すると、5度は同じですが、長3度の音がかなり違って高いです。純正律の和音は共振とうなりとでいわゆる倍音が響きますが、ピタゴラス音律の和音では響きませんね。一方短3度は、平均律よりも純正律に近いです。
またこのピタゴラス音律をCから始めるてEまで行ったところで止めると、ヨナ抜き五音階ができます。五音階はこうやってできたんですね。
邦楽の音階は、東洋律というものでできているそうです。基準音(日本の場合はD)から5度上がり4度下がりで取っていくそうで、4度というのは5度の裏(基準を変えると5度になる)ですから、
結局はピタゴラス音律と同じになります。小生の母親はお箏の師匠でしたが、教えていた曲は明治以降ドレミ音階(平均律)が日本に入ってきてからの近代邦楽で、西洋楽器と合わせることができるよう作曲されている曲が多いです。その点、昔のものとは違います。とは言っても、箏の調弦はどうやっていたかというと、基準音は音叉で取り(DかC)、後は和音で合わせていました。おそらく、5度と4度です。調弦は平均律ではなく、東洋律のようですね。
この調弦で平均律の西洋楽器と音が合うかというと、短調の和音だったらほぼ純正律になるので、よく合います。久本玄智作曲の「夢」、箏の楽譜を五線譜にすると、ハ短調で、ドミラの和音がよく出てきます。まさにC-mollです。
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