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2016/03/10

震災復興の政治経済学

2016年3月10日

あの大震災から、明日で5年経ちます。。
図書館に予約していた「震災復興の政治経済学」(斉藤誠著、日本評論社)がちょうどこのタイミングで回ってきました。人気のある本のようで、「次の予約が入っています。貸し出しの延長はできません。」という赤紙が入っています。

さて、この本の結論は、「震災復興予算は多すぎる。原発事故対応予算は少なすぎる。」ということなのですが、前者に関しては、復興予算が被災地に対して使われず、復興予算の名目で関係ないところに使われている、と感覚的に思っていたとおりでした。小泉内閣→民主党政権を通じて削減されていた「不要、不急」の公共事業費が、震災復興という名目で、あるいは隠れ蓑にして一気に「倍返し」に出たと感じていたからです。

実際の被災地への復興予算の投入にはきめの細かい配慮が必要なのにそれをやるマンパワーは足りず、実際に作業を行う作業者も足りません。また国の予算は個人支援には使えないため、被災地に対してはなかなかお金が出ていかないんですね。その点関係ないところであたらしいは道路を「国土強靱化」の名目で造った方が、予算が一気に捌けて予算執行率が上がります。多すぎる予算が組まれているのに被災地にはお金が行かないのは、そのあたりがからくりだと思っていました。

しかし残念ながら、この本の論調は、説得力がありません。確かに「国土強靱化」の名目で関係ないところに予算が使われていることは指摘していますが、肝心の東日本大震災の被害を、東北3県の、それも津波被害に限定して阪神淡路大震災の被害と比較して論じているからです。筆者は「主な被害は東北3県だけである。東日本というネーミング自体がおかしい。」と言っていますが、東京でも死者が出ていますし、川崎市のミューザ川崎大ホールの天井落下は、死者が出なかったことが奇跡です。また浦安では液状化による都市インフラの破壊で、長期間上下水道が使えなくなるいました。さらには津波被害による計画停電の影響で(原発事故だけではなく、大出力の火力発電所が津波でやられた影響が大きいです)、関東のあちこちの工場で生産が止まりました。こういう事例を経済的に評価し、「関東の被害金額はこれだけだから、東北3県の津波の被害金額と比較して微々たるものである。よって経済学の計算としては無視できる。」と論じてあれば(渋々)納得できますが、関東の被害に関しては、全く無視です。これではせっかくの着眼点が、説得力を持ちません。

原発事故関連については、表向きは東電が補償するように見せかけて、実は国費が投入されているからくりがよくわかりました。本来なら東電と一緒に、東電に出資している金融機関や投資家も何らかの責任を負わなければいけないのですが、こちらは焼け太りですね。東電は解体出直しを期待したのですが、破綻させるにはあまりにも大きすぎたと言うことなんでしょうか。

興味を引いたのは、原発事故に対して、「津波の高さは想定外だったかもしれないが、それから起こった事象は想定内だった。」という指摘ですね。実は事故時のマニュアルがちゃんと整備されており、そのマニュアル通りに行動した福島第2発電所は全機冷温停止し、マニュアルを無視して行動した福島第1発電所は全機メルトダウンを起こしてしまった、という事実です。以前から指摘されていることですが、適切に行動していれば3機のうち少なくとも1機は、それも一番放射性物質の放出が多かった2号機は、メルトダウンは免れたはずです。

日航機の事故もそうですが、日本は必死で頑張った人、それも亡くなっていればなおさら、その行動は「神の行い」として批判を封じる風潮があります。ただその個人を非難するのではなく、その行動が最善だったかどうか、言い換えればもっと良い手はなかったかどうかは、事後に検証する必要があると思います。そして最善手を打てなかった問題があればそこを正し、改善を行うべきと考えます。同じような事故は、必ず起きますから。福島第1原発に関しては、所長も含め異常時対応の訓練不足で、そこは現在も改善されずに再稼働の準備が進められています。

この本とは直接関係ありませんが、原発の安全対策は相変わらず「事故は起きない」という前提に立っています。その点高浜原発の運転停止の仮処分は、当然だと思います。

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