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2014/09/03

高学歴ワーキングプア

2014年9月3日

私事ですが、小生の二男は博士号を持っていますが、正規雇用の仕事には就いていません。博士号をとったときに教授から「大学に残れ」と言われたのを断ったので、自業自得ではあるのですが、「研究職」としての就職先は、狭き門のようです。二男は「ロスジェネ」と言われる世代のまっただ中で、大学院を修士で辞めて就職するときはちょうど「小泉改革」の波に引っかかり、国立機関の独立行政法人化のあおりで2年間研究職の採用がストップし、国家公務員一種に合格しているのに就職先がなかった、と言う目にも遭っています。

国の予算で、例えば新規技術の開発などで、複数年にわたるプロジェクトの予算が付くことがあります。こういう予算が付くと、民間企業も含めていろんな研究機関が事業計画を出し、認められればその研究機関には数億のお金が下ります。その研究機関はそのお金で設備を増強しますが、人手が足りないときは、そのプロジェクトの期間だけの有期雇用で人を雇います。ここに「フリーの博士」が応募し、うちのドラ息子もそうやって今までどこかに潜り込んできました。ただ身分は、ものすごく不安定です。これから、どうするんでしょう。

「高学歴ワーキングプア」(水月昭道著、光文社新書)という本を読んだら、うちのドラはまだ恵まれている方だということがわかりました。1991年からの国の大学院増強計画により、就職の充てのない博士が大量生産されているというのです。数年ピッチで職探しをしているとは言え、コンビニでアルバイトしているわけではなく、ワーキングプアより少し上(かろうじて水面から首を出している程度ですが)の生活をしています。この本にも書いてありましたが、出身大学(修士まで)が旧帝大というのが効いているのかもしれません。

なお同じ博士でも、医学博士と薬学博士は別で、さらに工学博士は就職先にそれほど困らないようです。

また研究機関であっても、民間企業の人事担当者はこういう実態が全くわかっておらず、数年おきに職を変わっているのは「企業人としての適性に欠ける」と見なされ、面接でいつも圧迫面接をやられているそうです。またプロジェクト満了時に現場は「優秀な人材だ。残してくれ。」と要望しても、人事は「契約ですから。はい、さようなら。」で追い出されているようです。

そして非正規雇用ではどうしても研究「補助」の立場になるため自分の名前では論文を書けず、研究職としてのキャリアとしては、マイナスになっていくようです。

民間企業はどうかというと、日立や富士通などの大手はともかく、例えばうちの会社(退職しましたが、まだ健康保険は継続しているし、企業年金ももらっているので、うちの会社と書きます)レベルでは、工学博士はともかく(数人います)、理学博士や学術博士は採用しても使いこなせない(使う部署がない)でしょう。

こうやってみると博士課程の修了者は、音楽大学の卒業者と似た立場かもしれません。例えば音大のヴァイオリン科を出ても、日本国内のオーケストラの募集数は、卒業生の数十分の一しかありません。そうすると、キャリアを捨てて就職するか、フリーの演奏家として(一人のコンサートで黒字になるような人は、日本で数人です)各オーケストラのエキストラとしての出番を待ち、機会があれば募集に応募するという生活を、ずっと続けなければなりません。それでもオーケストラという受け皿がある楽器はまだマシで、同じ芸術大学でも絵画専攻だったら、食うや食わずになるでしょう。子供が「大学院、それも博士課程に行きたい」と言い出したら、親は「絵描きになりたい」と言われたのと同じ覚悟で対処しなければならないようです。

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